ラボラトリー体験学習とは
体験学習によるトレーニングを「ラボラトリー方式のトレーニング」とか、「ラボラトリー方式の体験学習」などとよんでいます。または、「ラボラトリー・メソッドによる体験学習」ともよばれます。
この”ラボラトリー”という言葉をそのまま訳すと”実験室”となります。それは、第三者によって操作的に人間を操ってトレーニングをするようなイメージであり,「誰かを実験にかける」,「参加者がモルモットになる」といったような響きがついてくるかもしれません。 本来の”ラボラトリー”とは「自分が自分のことをいろいろと試みる場」という意味で,あえて実験という言葉を使っているのは,実験をする主体は学習者自身であることをさしています。まったく研修/教育という新しい教育環境にやってきて,そのときその場にいる人々とのコミュニケーションやグループワークなど,今そこに生じた生の人間関係の体験を素材にして,自分が自分自身を深く見つめ直したり,他者との関係のもち方を点検したり,新しい行動様式(たとえばリーダーシップとか聴く態度など)をグループの中で試したり,グループや組織の人間関係を変革するためのシミュレーションをしたりするのです。 “ラボラトリー”は他者との関係を創り出しながら,自分自身のこと,人間関係そのものを”いまここ”の中のプロセスに気づきながら主体的に学習する場といえます。
通常の学習は,過去の誰かが獲得した知識を教育者から伝達されて,それを記憶する形式で学ぶといった「概念学習」あるいは「知的学習」とよばれます。または,文化伝承型学習とよばれたりします。
しかし,ラボラトリー方式の体験学習は,”今ここ”での自分の体験を他者と共に総合的に検討することによって学習者の変化・成長を生み出す形式なので,「体験学習」あるいは「態度学習」といわれるゆえんでもあります。
最近は,ラボラトリー方式の体験学習というよりは,単に体験学習と呼ばれることが多くなってきています。また,参加者自身の主体性を大切にすることをより表現できるようにと,トレーニングという言葉を使うよりは、「学習」とか「学ぶ」といった言葉が使われるようになってきています。また教育担当者のことを,学習を促進する人という意味で,「トレーナー」というよりは「ファシリテーター(学習促進者)」と呼ぶようになってきています。(日本体験学習研究所HPより)
また、南山大学名誉教授津村俊充さんは、ラボラトリー方式の体験学習を以下の通り定義しています。
「ラボラトリー方式の体験学習」とは、「特別に設計された人と人がかかわる場において、“今ここ”での参加者の体験を素材(データ)データとして、人間や人間関係を参加者とファシリテーターがともに探求する学習」と定義されている。(津村,2010)
「ラボラトリー」とは、「実験室」と日本語訳することができるが、実験とは実験者と実験対象といった、いわゆる実証的な実験を指しているのではなく、実験者(学習者)が自ら実験対象(学習者)となって、ファシリテーターから提示された特別に設計されたグループ体験(実験)やコミュニケーション体験(実験)を通して、学習者がプロセスに気づき、そのプロセスを素材にしながら、体験学習の循環過程を活用し、自分の対人関係のありようや他者、グループなどの理解を深め、個人とグループがともに成長をすることを探求する活動であるといえる。「ラボトリー方式の体験学習」のキー概念として、「コンテントとプロセス」「体験学習の循環過程」の二つの考え方が重要であると考えている(津村,2001)。
対話の窓口では、「プロセス」と「体験学習の循環過程」の2つの視点を尊重した教育実践、学習体験を、皆様が悩まれている事象(コミュニケーション不足やリーダーシップ醸成など)を「ねらい」として研修を組み立てていきます。